食後すぐの歯磨きはNG、について

話題

少し前になりますが、「食べた後、すぐに歯を磨いてはいけない」という内容のものが話題になりました。私自身もあの時期はよく患者様に聞かれました。よくよく調べてみますと、ある炭酸飲料水に抜去した歯を浸けてしばらく置き、その後取り出して計測したら歯の表面が脆くなっていたという論文から派生したようでした。どうやら、この論文から「食事の直後は歯が脆くなっているから、30分くらいは歯を磨くと傷つけてしまう」という話になり、様々なメディアで報じられて話題となったようです。このことで色々な方面から「問題ない」「関係あるかも」と意見が出回り、私たち歯科業界の者たちも混乱していたようでした。

酸蝕歯

酸蝕歯の話

結論から先に言ってしまえば、大本になった論文は酸蝕歯の実験だったようです。酸蝕歯については近年、ようやく日本でも少しは耳にするようになりましたが、依然として虫歯や歯周病の有病率がまだまだ高いのでそこまで注目されていません。以前は特殊な職業の方やお酢を飲む習慣のある方などに限られていた話だったのですが、最近ではその範囲は広がっているようです。ちなみに、虫歯は低分子量糖の分解による酸性細菌生成物によって引き起こされる歯の硬組織の化学的溶解と定義づけられているのに対し、酸蝕は維持目的のエナメル質や象牙質のコンディショニングに使用される酸を除く、別起源の酸によって引き起こされるアパタイトミネラルの溶解と定義づけられています。今回問題の発端となった実験は酸蝕の研究としての方のニュアンスが強く、確かに歯質は脆くなったとされています。

ちなみに、この背景には米国において他国よりも酸蝕歯の有病率が増えているということがあるようです。そして、これには清涼飲料水との関係が大きいようです。そのため、食後の歯磨きについては酸食症の方やそのリスクの高い方は配慮が必要なようです。これらの方の場合、酸性度の高い清涼飲料水摂取後にはある程度の時間をおいてから歯磨きをした方がよいと考えられています。そのほかの殆どの方は特に問題ないとされています。

そもそも、食後は口腔内は酸性に傾くので歯の硬組織は溶解する傾向にあります。そして、また酸性度は低下して歯の硬組織の表面では再石灰化を起こります。このように、食物の性質のみではなく唾液の正常や時間など様々な要素が絡んできます。厳密にいうと、同じ状態で存在することはなく、絶えずダイナミックに変動しながら平衡を保っているわけです。

これらの事例のように、酸蝕歯に関する研究を”食後”と解釈してしまったことによって大きな問題となりました。それから、「食後すぐに歯磨きしてはダメ」という意見が出てきたら「問題ない」という人が出てきたり、「関係はあるはずだ」という人が出てきたりもしました。しかし、現在のところ結果としては酸蝕に対してハイリスクの方のみに配慮が必要ということです。論文自体に問題はありませんでしたけれども、解釈する側の問題でこのようなことが起こってしまうということは、最近出回る医療についての色々なお話しも慎重に選びとらなくてはいけないということを私たちに教えてくれています。これらのことについては日本小児歯科学会にて声明を出しています。