骨の成長の様相

少々ややこしい話になりますけれども、骨の成長の様相の大原則を理解しておくことは、矯正治療の開始適正年齢や歯周病やインプラントの際の骨の造成などあらゆることに関係することを知るということです。このことによって、術者から提言された診療方針についてや治療方法などに任せ切った上で生じた、納得しきれない結果を甘んじて受け入れなければいけないという状況を回避する可能性が高まります。

細胞の成長

細胞レベルでの成長は次の3つからなります。

1,肥大:個々の細胞の大きさの増大
2,増生:細胞数の増加
3,細胞が細胞外物質を分泌する:細胞自身の大きさや数に関係なく全体の大きさが増す

硬組織

以上の3つの成長は、全て骨の成長でもみられます。骨の場合、肥大はあらゆる場面でみられますけれども、肥大は特殊な状況のみでみられます。この両者では肥大の方が重要な役割を果たします。細胞外物質の分泌は骨格系においては後に石灰化する場面において特に重要になってきます。骨格の細胞外物質が石灰化するということは、軟組織と硬組織を区別する上で重要なことになります。硬組織は骨と歯のことをいいます。これに軟骨組織を含んで分類することもあります。軟骨は成長期には軟組織のような挙動をとるため、軟組織に分類されることもあります。

硬組織の成長

軟組織の成長は増生と肥大の組み合わせで起こります。そして、その結果を間質的成長と呼びます。間質的成長は組織内のどこにでも生じます。これは全ての軟組織、未石灰化軟骨にみられる特徴です。

一方、硬組織が形成される場合には間質的成長は不可能になります。増生・肥大・細胞外物質の分泌は可能ではありますけれど、石灰化の生じた組織中では表層部においてのみ生じ、内部では進行しません。表層部での成長は直接付加または表面付加と呼ばれ、骨膜中で新しい細胞の形成が起こり、そこで生じる細胞外物質が石灰化し新生骨になります。骨格系の主要な部分は軟骨内で生じることから、この現象は特筆すべき事柄といえます。体幹・四肢・頭蓋底でもこのような成長がみられます。

骨の成長の様相

軟骨性頭蓋の発育

軟骨性頭蓋の発育は胎生3ヶ月から始まります。軟骨板という組織が鼻嚢から頭蓋底の大円孔まで伸びます。軟骨は血管のほとんどない組織であり、内部の細部は外層からの拡散作用で栄養供給されるため、薄い構造となっています。発育初期段階の胎児は極めて小さいので軟骨性骨格でも問題はありませんが、成長が進みむにつれ内部に血液供給が確保されないので次第に問題となってきます。

胎生4ヶ月頃になると軟骨性頭蓋に向かって血管が内部成長してきます。この部位周辺は骨化中心となって軟骨が骨に変わり始めます。軟骨が急激に成長し骨に置き換えられてゆく結果、骨量は相対的に増加し、軟骨量は相対的に減少します。結果的に軟骨組織は小さな軟骨領域となり、骨格を形成する骨をつなぐ役割をするようになります。この成長は四肢の長骨でも同様のものがみられます。

長骨の発育

四肢の長骨の発育では骨の中央部と両端で骨化が起こり、それぞれ骨幹と骨端に成長します。骨幹と骨端の間には骨端板が生じます。骨端板は未石灰化の軟骨領域で成長中心となります。長骨の場合、この他にも骨膜も外形変化に関与します。

骨端板では外側端に軟骨細胞層があり、活発に分裂を繰り返します。これらの細胞は増殖活動によって骨体に押され肥大し、細胞間に基質を分泌します。基質の石灰化が始まると骨組織に置きかわります。軟骨組織の増殖がみられるうちは成長が持続し、成熟の割合の方が大きくなったときに成長が完了します。このとき骨端板は消失します。

膜内骨化

骨組織が途中で軟骨形成をみることなく、結合組織内部で骨基質の分泌により作られることを膜内骨形成といいます。この骨化は頭蓋や上下顎骨で生じます。下顎骨の発生などは、メッケル軟骨外側の間葉細胞から始まり、膜内骨形成を生じます。メッケル軟骨は下顎骨の発育とともに消失・分解し下顎骨を形成することはなくなります。そのかわり、中耳の槌骨・砧骨になります。上顎骨は上顎突起内の間葉細胞が凝集した中心から起こりますが、成長軟骨は上顎骨の形成には直接的には関与しません。

リモデリング

膜内骨形成は石灰化組織中での間質的成長は不可能で、骨表面へ新生骨が付加されることによってのみ骨組織は形成されます。ある部分では骨組織が新しく形成され、別の部位では古い骨組織が吸収されることによって骨の形の変化が生じます。このリモデリングのタイプは膜内骨化をする部位でも、軟骨内骨化をする部位でも両方で認められます。

このようなことから、薬剤を用いた骨の造成には成長中心がないので骨形成が本当に出来るのかという疑問を生します。また、そもそも石灰化組織中での間質的成長は不可能であるので、増生・肥大・分泌以外である誘導がどれだけ骨を作るのか更なる研究が必要になると思われます。