齲蝕の新しい診断基準「ICDAS」とは

齲蝕の診断

以前は大まかな枠組みの「虫歯」として、ほとんどの齲蝕は処理されていました。1診療所に対して患者数も多く「狩猟型」などと呼ばれるように、修復処置が中心に行われてきました。削って何かを入れる治療のことです。2009年にMI(ミニマルインタベーション)の概念が提唱されて以来、修復処置には異なるデザインが提唱されました。1診療所あたりの患者数も減少傾向にある中、リピーターを増やす歯科医院経営の都合と相まって予防歯科の導入が本格化してきました。「農耕型」などと呼ばれています。結果的に予防歯科の普及は患者さんの利益になるだろうといわれています。という内容の書籍・専門書が増えました。業界誌もそのような流れです。しかし、日本における予防型へのシフトチェンジが良かったかどうかはこれから先で分かってくることです。ですから、今はこのような表現になります。反動が強過ぎて自然に還るようなことを言い出す人も出てきました。「歯を磨いてはいけない」と言い出す人もいれば、狩猟生活を送っている人の食事の真似を推奨するような話もあります。既にある程度培ってきたものを手離す勇気をそのような形で表現する人達がいる一方で、思考の粘りを利かせて新しい形へと改良しようとする人もいます。予防歯科の取り組みはまだ日が浅いかもしれませんけれども、少しずつ改良がされていきていて、処置をしないで済む齲蝕を判別しようとされてきています。そのような流れの中で近年唱えられているICDAS(International Caries Detection and Assesment System)もそれらのうちの一つになります。

ICDASとは

自然治癒のない「齲窩」と自然治癒を含む「齲蝕」は全く異なる概念になります。予てから現在の齲蝕診断は時代遅れのものとなっていることが言われていて、齲蝕の発生と進行のプロセスを評価する新しい診断基準の開発が必要であることがいわれていました。FDIも同様の見解を示しており、その基準に求められる条件も提示していました。そのような背景を元にICDASは開発されました。齲窩と齲蝕をいかに正確に根拠を持って判別するかのガイドラインとなるものがICDASになります。これは欧米での探針による齲蝕の診査の廃止と同時に、視診の見直しがされたことにもよるところがあります。ICDASの画期的なところは、検診に先立って歯面清掃を行うことが求められているところです。これまで用いられてきたWHOの齲蝕診断基準の「健全」から「Decated 1(日本ではC1)」をより詳しく3段階に分けて診査しようとしたカリオロジーのエビデンスを臨床の場に反映しようとした診査方法になります。このICDASは更に改良がなされ、2005年のワークショップにおいてICDAS 2が発表されています。

ICDASの診査方法の概要

1:診査対象部位の選択
・填塞処置、修復治療、補綴処置の分類
・歯単位で行うか、もしくは歯面単位で行うか選択
歯面単位で診査する場合、裂溝ごとに細かく診査が行われます。

2:歯垢の付着部位の記録
3:歯面清掃
4:エアーによる(5秒間)歯面乾燥を行なった後、肉眼で観察

歯冠の評価・ICDASの分類

Code1:シーラント(裂溝の一部) 
Code2:シーラント(裂溝全体)
Code3:修復
Code4:アマルガム修復
Code5:ステンレス冠
Code6:ポーセレン冠、金冠、金属冠、ベニア冠
Code7:修復物の破折、脱離
Code8:テンポラリー修復
Code9:以下の状況が該当
96 エナメル質表面の欠損
97 齲蝕による喪失歯
98 他の理由による喪失歯
99 未萌出歯

エナメル質齲蝕のICDAS分類

Code1:健全
Code2:エナメル質における目視可能な初期変化
Code3:限局性のエナメル質の崩壊
Code4:象牙質への陰影がある
Code5:著名な齲窩、象牙質も目視可能
Code6:拡大した著名な齲窩、象牙質も目視可能

齲蝕活動性の評価

「歯冠部の評価」
・齲蝕活動性の高い部位
Code1〜3:明確な白斑の検出、スティッキー感の触知、歯垢の有無
Code4:齲蝕活動性が高いと判断
Code5~6:齲窩の窩底や窩壁

・齲蝕活動性の低い部位
Code1〜3:白斑が茶色や黒味がかっている、滑沢
Code5〜6:齲窩の窩底が硬い、滑沢

「歯根面の評価」
​形状や視診による評価、硬さなどから判断

正確に書式に従って行われることも必要なことではありますが、導入への手間や技術の習得と習熟に時間を要することが考えられます。また、転院した場合に転院先で導入されていない場合は継続的な判断が難しくなります。このことは特に活動性への評価に対して考えられます。少なくとも、これらが行われるようになった背景を知り、齲蝕に対するアプローチ方法が増えることによってMIの実践、ダウンサイジングの実践、そして歯の保存につながることが望ましいと思われます