齲蝕の診断基準

齲蝕の診断とリスクコントロールでは歯科治療方針の変遷と予防歯科の導入についてお話ししました。そして、その重要性からリスクコントロールについての解説をしています。

その中で、齲蝕の定義から考えることが大事なので触れていますが、改めて記載すると

『齲蝕とは、歯面上の歯垢の中で起こる動的なプロセスのなかで、歯の基質と周囲の歯垢との間の平衡関係が妨げられた状態で時間が経過し、最終的に歯の表面から石灰化物質の喪失が生じることである』

とあります。

齲蝕の診断基準

近年、予防歯科の普及と広がりがみられる中、その一方では明確なコンセンサスの確立が急がれているという現状があります。現在の日本の予防歯科は、多くの歯科医院では独自に予防プログラムを組んで執り行われているということが現状でもあります。

更に言えば、クリーニングについて判断する術者の技能検定のようなものはありません。

つまり、質の均一化は達成されないまま言葉だけが先走りしてしまっている部分がないわけではありません。。

予防歯科のあいまいさ

この定義の中では、齲蝕には”歯垢”の有無が重要であることが示唆されています。

それにもかかわらず、近年の予防歯科の普及と広まりがみられる中で「なんでもかんでも保存して予防してゆく」というものも見られるようになりました。

ブラシの届かないような場所、ブラシの届かない深さの虫歯、進行度などの配慮がされないまま「保存」という評価が下されることもしばしば見受けられます。

経過観察の基準も曖昧です。

たまに「まだ大丈夫」という言葉をかけられて心配になって当院に受診される方がいらっしゃいますが、「まだ」というのは「これから達するだろう」というニュアンスが含まれているので無理もありません。

この背景には「隣接面のエナメル質ー象牙境(以下ED境)にある齲蝕の50%生存率」などの研究結果などもあるようです。

この研究は1999年に発表されたもので、50%のED境付近の虫歯がED境を超え象牙質側に虫歯が進行してしまわない期間を表すものです。その結果は次の通りです。

(上顎)
・第二大臼歯近心 3.6年
・第一大臼歯 近心3.4年 遠心5.9年
・第二小臼歯 近心3.9年 遠心2.1年
・第一小臼歯 近心3.1年

(下顎)
・第二大臼歯近心 2.8年
・第一大臼歯 近心3.6年 遠心2.8年
・第二小臼歯 近心5.1年 遠心3.3年

ご覧の通り、これらは臼歯部の評価になるのですが、たまにこれを前歯に当てはめて診断されているものを見かけます。また、保存を試みた場合の最長は5.9年です。これは場合によっては管理の行き届いたレジン充填よりも短いと見ることも出来ます。

詰め物周辺に新たに出来る虫歯を「二次カリエス」と呼びますが、これはかつて「初発の虫歯と同じメカニズムである」と結論づけられました。

初発の虫歯をつくらないようにすることが予防歯科の大きな目的であるのであれば、処置をすることの方が有利に働くとも考えられる結果です。

確かに削らないで経過観察とすれば患者さんに喜ばれることもあるかと思います。しかし、気持ちに寄り添うことと商売として迎合することが時に混同されてしまっていることもあります。

また、この評価方法はバイトウィングというものによるレントゲン撮影法によるものなのですが、二等分法という一般的な撮影法で同一の評価をしようとしていることも多くみられます。

冒頭にあげた「齲蝕の定義」に対して、隣接面の齲蝕における歯垢の有無は評価がしにくいということもあります。ある程度の大きさまでは”齲窩”も触知出来ません。

咬合面の評価

咬合面の虫歯についての診断基準には次のようなものがあります。

1:乾燥させ白斑病変であれば、リスクコントロールを行いながら管理してゆく
2:濡れた状態での白斑病変は象牙質に達していることが多く、充填処置を検討する

・短針による表面の連続性の評価・軟化状態の確認
・レントゲン撮影による透過像の位置確認
・総合的な検討

これらについて、充填か保護観察か、またそれを判断するのに必要な「齲蝕病変の停止」について、今後お話ししてゆこうと思います。