齲蝕反応象牙質への接着

齲蝕反応象牙質への接着

齲蝕反応象牙質(caries affected dentin:以下CAD)は、一般的には健全象牙質との接着強さに比べて低い傾向があるといわれています。そもそも齲蝕除去後に歯質接着を図るので、その対象の多くは前駆菌層と混濁層の中間もしくは混濁層中になります。また、象牙質の構造は浅層と深層では異なり、そのこと自体が接着強さに影響することも示唆されています。齲蝕の階層構造も考慮にいれると健全象牙質を露出させる場面があるのかすら不明です。ですので、慣習を除いてわざわざ健全象牙質と接着強さを比較する意味がどれくらいあるのかは分かりませんが、私たち歯科医師が材料メーカーや業者さんにプレゼンテーションを受ける場合に用いられているデータの多くは健全象牙質を対象としたものの可能性があります。そこで今回は、CADへの接着についてお話ししたいと思います。

齲蝕反応象牙質接着の一般データ


前述したように、CADとの接着が健全象牙質と比較すると劣るという報告があるわけですが、実際にどれくらい接着強さが下がるのかについてお話しします。たとえば、2ステップ式のセルフエッチングプライマーによる接着システムでは、健全象牙質への接着強さはおよそ29.5MPaの強度が出ると言われていますけれども、CADに対しては14.0MPa前後だといわれています。1ステップ・1ボトルの接着システムでも数値こそ違いますが同じような関係性がみられるようです。リン酸エッチングを併用した2ステップの接着システムでは10%リン酸を用いた場合はCADへの接着力の低下がみられましたが、32~35%のリン酸を用いた場合には接着力の低下はみられなかったという報告もあります。

接着力の差の原因は?

脱灰の差

CADと健全象牙質とでは接着力に違いがあったとという報告が多いわけなのですが、この原因についてはいくつか言われていることがあります。一つ目の理由として「脱灰の差」がいわれています。CADではリン酸カルシウムの沈着によりミネラル成分の増加がみられます。無機酸と比べると脱灰能力が劣るセルフエッチングプライマーでは脱灰効果が薄れ、その結果モノマー浸透性が低下するといわれています。それにより、は薄い傾向を示すため接着力の低下につながるといわれています。ただし、高濃度のリン酸を用いて歯面処理を行なった場合にはレジンモノマーの浸透性が保たれて健全象牙質と同等の樹脂含浸層

機械的強度

接着強さは、接着界面の強さの他に、被着体そのものの強度に左右されやすいです。CADは一部に脱灰の影響で軟化を生じています。その他に、コラーゲンの高次構造の変化も生じています。さらには、健全象牙質よりも含有水分量は多いため弾性も劣ります。