抜歯即時埋入

抜歯即時埋入

何のために行うのか?

インプラント抜歯即時埋入とは、読んで字のごとく残念ながら保存が出来なくなった歯を抜歯する際に、抜いた部分に同時にインプラントを入れてしまおうというものです。これにより治療期間の短縮が図れ、抜歯後すぐに機能圧がかけられるので骨吸収も抑えられ、歯槽窩に寄せてインプラント窩を形成すれば良いだけになるというメリットのたくさんある治療法です、というお話のようです。

抜歯が行われると顎の骨が吸収することはご存知の方も多いと思います。いわゆる「骨が痩せる」といわれる状態です。これを防ぐために近年では抜歯即時インプラント埋入・即時負荷がよく行われるようになってきました。冒頭でお話ししましたように、この方法はメリットが多く、数少ないデメリットは術者の技量くらいなもののような言われ方をされ、また便利な方法であるとして広まってきています。

たしかに、機能圧をかけることで骨の吸収は抑えられるというのはもっともらしい理屈です。しかし、一方では強力な機能圧・咬合圧で骨が吸収してしまったというお話も耳にします。抜歯をするということは骨折と似たような状態であるから、安静にしてお風呂やお酒を控えるというお話を聞きますが、それくらい安静にしなくてはいけない部分にドリリングをし、機能圧を加えるということでもあります。

抜歯即時埋入は何のために行うのでしょうか?

研究ではどうなっているか?

倫理的にヒトでは研究できないことから動物実験によって抜歯即時埋入について検証されているものがいくつかあります。それによると、抜歯窩の治癒過程を組織学的に観察すると

・抜歯1周目
抜歯窩は粘膜に覆われます。その粘膜には血管と炎症性細胞浸潤が
みられます。
抜歯窩内面は束状骨で覆われ破骨細胞がみられます。

・2週目
被覆粘膜の炎症細胞は消失し線維芽細胞が豊富な結合組織が
みられるようになります。
抜歯窩内部には網状骨が多くみられ、辺縁骨頂では破骨細胞が
出現します。
この時、舌側よりも頬側の骨の方が著し骨吸収がみられます。

・4〜8週目
歯槽骨頂付近の束状骨は消失。骨外壁で著しい骨吸収がみられ、
リモデリングも同時に起こります。
この過程が8週目くらいまで続き、
結果として頬側で著しい骨吸収がみられるようになる。

という過程を辿ることが確認されています。そして、多くの動物実験では抜歯即時にインプラントを埋入したとしても骨の吸収が抑えられないことが観察されました。ヒトによる臨床研究においてもこれらと同様の結果が観察されました。

以上の結果から、インプラント抜歯即時埋入を行っても骨吸収は抑えられないことが分かりました。おそらくその理由は、抜歯窩の骨吸収は束状骨の喪失に関わっているのではいかと言われています。ですから、治療の腕や術式による差によって成功の可否が決まるものではないといえます。これを補うためにインプラントの表面にHAコーティングなどをしたものも一時期流行りましたけれども、他のサーフェスよりも感染が早いですとかHAが数年で剥がれるなどの話もありインプラント治療の本流にまでは出てきていません。しかし、近年のインプラントはそれ自体が質がいいので、とくに審美に関わる部分には後に必ず起こる骨吸収を加味して行うことは有効であると考えます。その他の部分に関しては、そもそもオッセオインテグレーションには数ヶ月待機時間を設けることが前提であったので、あえてリスクを冒してまでして行う必要があるのかよく検討しなければいけないように思われます。